カチカチ…カチカチ…
時計の音だけがきこえるこの部屋。
あたしは梓の部屋にいて……何してたんだっけ?

「おい!…おい!!」
「へ!?なに?」
「…お前オレに勉強教えてくれっつってウチに来たんだろ?
全然進んでねぇじゃねーか」

そうでした。今日は梓に勉強(宿題)を教えてもらおうと思って来たんでした。

「で?どこがわかんねんだ?」
「え、と。ここのページ全部?」
「…。お前今まで何やってきたんだよ。はぁ〜田島と三橋より悪りぃんじゃねぇの?」
「そんなことない!田島君と三橋くんよりかちょっとはマシだもん!」
「ハイハイ。ちょっとねちょっと。で、わかんねーところ教えるから、どこ?」

ごちゃこちゃ言う梓だけど、しっかり教えてくれる。
分からない所があれば丁寧に分かるまで教えてくれる。
優しいよ、梓は。教え方うまいしさ。
ぐるぐる頭の中で考えていたら「!ちゃんと集中してんのか!?」
なんて先生みたいな事を言われてしまった。

カチカチ…と時計の音。ガリガリガリ…と紙に字を書く
シャーペンの音。数十分の後…。

「できたよー!梓!ありがとう!!」

そう言ってみると、梓ははぁ〜と溜め息をつき
「どうせまだいっぱいあんだろ?それも一気にするぞ!」と
スパルタ口調。でも顔を見ればちょっと照れてるみたいで。

「梓。ありがあとう。いそがしいのにいつもあたしの勉強につきあってくれて。」
「いんだよ、そんなの。どうせオレも一緒の宿題あるんだし」
「だよね!梓も復習できるから一石二鳥だよね!」
「なに言ってんだよ、オレはが自分でもっと勉強できりゃいいなと思って
教えてるんだよ」
「なんで?」
「は!?」
「だって、ずっと梓が教えてくれるでしょ?だからあたしはこのままでいいの!」
「んな人にばっか頼るんじゃなく……」
「ちがうの!これからもずっと梓と一緒に居るから!
梓に教えてもらえるからいいってことなの!」

カァァ…と梓の顔が赤くなるのがわかった。
目が合うとバッとそらす。あからさまに照れている梓が愛おしい。

「梓かわいー」
「なんで!イキナリ!しかもかわいくねぇ!」
「梓」
「なんだよ…」
「好きだよ」
「……。お前はオレをどうしたいワケ?」

(大きなあなたを包み込めるくらいに広い心をもったあなただけのヒトになりたい)


午後の一時